かもめ食堂

先週、日テレでオンエアされた「かもめ食堂」を見ました。3連休の最後の夜中です。「最初だけでも見たいなぁ」と思って見始め、結局4時近くのラストまで見てしまいました。自宅の小さなテレビモニタで、部屋の明かりを落し、ひざを抱えて見るのにふさわしい映画でした。(以下、ばりばりネタばれあります。注意)
舞台はフィンランドヘルシンキ小林聡美が演じるサチエさんが主人公。サチエさんは1人で食堂を開いています。お客さんはなかなか来ません。ある日、日本かぶれの青年が訪れます。「ガッチャマン」の歌詞を問われ、サチエさんは、「誰だ、誰だ、誰だ〜」の後が思い出せません。「誰だ?」

本屋に併設されるカフェで、「ムーミン」の本を読んでいる日本女性が目に留まりました。思わず、「ガッチャマンの歌知りませんか?」と問いかけます。その女性もいぶかしみつつ、さらさらとノートにガッチャマンの歌詞を書きはじめます。その人が片桐はいり演じるミドリさん。

ガッチャマンがとりもつ縁で、ミドリさんはサチエさんの家へ寄宿し、食堂を手伝うことになります。相変わらずお客さんが入らないのですが、そのうち色々な人が、様々な背景を背負って食堂を訪れることになり…。

サチエさんと「かもめ食堂」が拠点となって、ヘルシンキの人たちと日本からやってきた人たちの淡い交歓が描かれるお話です。

「なぜ、ここに来たの?」彼女たちがヘルシンキに来た理由は、セリフで若干明らかになります。
地図を指差したら、ヘルシンキだった、というミドリさん。
フィンランドの人は鮭を食べるから、とここで食堂を始めたというサチエさん。
そして後から加わった、もたいまさこ演じるマサエさんは、両親の介護を終えてなんとなく息抜きに。

あまり自分を語ることのない、適度な距離感を持った3人が、なんとなく居心地の良い空間を作り上げてゆきます。(ミドリさんは若干、人への興味から色々尋ねて話を回してゆきます)

旅に出ると、よく「What brings you here?」と問われます。直訳すれば、「何があなたをここに連れてきたの?」という意味で、「あなたはなぜここに来たの?」という問いです。たいてい「For Business?or ...」と答えやすく続けてくれるので、大した自分語りをしなくても済むのですが(^^)。旅の途中でも、生活の中でも、ワタシはときどき、「なぜ自分はここに居るのだろう?」と自問します。この「かもめ食堂」では、ライトなタッチでさらっと流されているのですが、途中、彼女たちがそれぞれ1人になる時間が描かれます。人の中に居つつ、気負うことなく1人で居る。彼女たちの魅力はそこにあるのかなぁ、と思います。

印象に残ったエピソードを1つ。ミドリさんが「なぜオニギリがこの食堂のメインメニューなのですか?」と聞きます。サチエさんは、幼少の頃に父親が作ってくれたオニギリの話をします。オニギリだけは人が作ってくれたものがおいしいから…と。(サチエさんは母親を子どもの頃に亡くしています)

オニギリをひとつひとつ丁寧に握るように、そして後からおいしい具が出てくるように、細かなエピソードがつづられ、その1つ1つが愛しく感じられる映画でした。

監督は荻上直子。サチエのモノローグで始まるオープニング、波止場で猫を連れた男性が背景から手前アップになるシーン、マサエの森でキノコ採り〜lostした荷物が届いてトランクを開けると光り輝くキノコが出てくるシーン、ラスト近くでプールでサチエが皆に祝福されるイメージ、に、ニヤッとしました。