羊皮紙に眠る文字たち

羊皮紙に眠る文字たち―スラヴ言語文化入門
黒田龍之助著「羊皮紙に眠る文字たち スラブ言語文化入門」を読みました。4月5日のエントリhttp://d.hatena.ne.jp/ponjpi/20050405に書いたように、ロシア語の入門者がチェコ語をちょっとかじって、「ええ〜。ロシア語とチェコ語って似てるぢゃん、ロシア語ができるようになればスラブ語圏を自由に旅行できるようになるかも。わくわく」と思い、コバヤシ先生に「スラブ語圏の相違についてわかりやすく書かれている本を教えてください」と頼み、勧めていただいた本です。

その前にちょっと以前の記事(コメント欄だったかな)を訂正。「ネーメツ」がロシア語でもチェコ語でも「言葉がわからない人」とう意味で「ドイツ人」をさす、おそらくそれはペテルブルグ建都の頃では…と書いたのですが、大きな間違いでした。スラブという語源にも関係することなので、これ重要。

神山孝夫先生の研究室サイト内のページより
日本語のスラブ人等のもとになったのは、「ことばslovoを持つ民」の意である*sloveneと考えられている。これはすぐ西隣にいた彼らのことばを解さぬ民たる*nemьci、すなわちドイツ人あるいはゲルマン人との対比で生じた呼称であろう。後者は「口をきかぬ者」を原義とする。とすればこのスラブ人という呼称が生じたのは、彼らが拡大して直接ドイツ人と接するようになった5,6世紀前後ということになろう。
http://homewww.osaka-gaidai.ac.jp/~kamiyama/slav1.htm

さて、ロシア語とチェコ語が似ているのは、スラブ語というくくりに入っているから当たり前、と納得するのは簡単なのですが、どのぐらい似てて、どのくらい違うのか、その辺りをもうちょっと知りたかったのです。現在のスラブ語圏の人々が自由に同じ言葉でしゃべっていた時代(なんてものがあったのか)、いつ頃分岐したのか、つまり「スラブ語版バベルの塔の崩壊」みたいなものがあったのか…と。(これ、飛躍した考えですので「バベルの塔の崩壊」ってタイトルでいつかまた書いてみますね^^)

現代のスラブ語は、次のように分類されます。

東スラブ語群…ロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語
西スラブ語群…ポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語、上ソルブ語、下ソルブ語
南スラブ語群…スロヴェニア語、クロアチア語セルビア語マケドニア語ブルガリア語
(第1章 スラブ語学入門より)

これらスラブ語の共通の祖先を「スラブ祖語」というのだそうです。「スラブ祖語」。ワタシのキーワードに入りましたっ。しかし、文字のない時代なので記録に残っておらず、学者の方々がスラブの諸語の共通部分を研究して、再構築を図っているところなのだそうです。「祖語」と「文字」。文字ができたから、言葉が分岐していったのか、それとも…とまたもや飛躍した考えが頭をもたげます。

上記のスラブ諸語を文字でわけると、

キリル文字(主に正教を信仰している地域)…ロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語
ラテン文字(主にカソリックを信仰している地域)…ポーランド語、チェコ語、スロヴァキア語、ソルブ語スロヴェニア語、クロアチア語セルビア語の一部

スラブ語圏でなくても、キリル文字を採用している言語(国)はあり、これは主に政治的なものです。これはこれで興味深いのですが、まとまらないので略。

著者はロシア語をメインにされているため、この後さまざまな文法事項をロシア語を中心に展開されています。ワタシはロシア語を習っているので、この例がよくわかり、楽しい。ロシア語を習いたての人が読むと、なるほどね〜とうなずく所が大でしょう。ただし。ロシア語はメジャー言語(2億人以上の人が話している)だからといって、これがスラブ語の基礎になり、他の言語が派生した訳ではない、ということを付記されています。

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だんだん体力がなくなってきたので、この話はまた今度。さっきうたた寝してたら、チェコの小春(仮名)が夢に出てきました。へたれ旅もまだまだ続きを書きたいので、どうぞよろしくです。