マティス展

先週の土曜日、上野の西洋美術館で開催されているマティス展に友人と行ってきました。
人が多いのと、『「ヴァリエーション」と「プロセス」という視点から、マティスの作品を解き明かすことを試みるものとなっています』という展覧会の趣旨が、説明的でなんとなく肌に合わなくって、んーと思いながら見てたのですが、「金魚鉢のある室内」という絵を見つけて、あー、来てよかったとやっと思えたのでした。

この「金魚鉢のある室内」は、深い藍と青色の部屋の窓辺に、赤い金魚が2匹鉢に入ってるという絵です。パリのポンピドゥーで、マティスの作品を見てたときに、いくつか同じ主題の絵があって、ワタシは心ひかれたのでした。幼い頃、一心に本を読んでいて、ふと気がつくと青い闇が部屋の中を満たしていて、ああ水泳に行く時間だ、早くお母さん帰ってこないかな…と窓の外を見ていたことが思い出されるのです。ワタシは夜、プールで泳いでいて、もう一回別の一日が始まるようなちょっとユウウツな感じと、光と水の中で泳ぐ心地よさを想像して、すごく嫌いですごく好きな時間でした。ぼうっとマティスの金魚を眺めていると、その頃のことが思い出されて、金魚はいいなぁ…と思っていたのでした。で、今回も、一回ざっと全ての絵を見渡した後、またその絵の場所に戻って、椅子に座って人だかりの肩越しに、その絵をぼーっと見てました。

もう一点、マティスの絵ですごく好きなのは、レニングラード(当時)のエルミタージュ美術館でみた「アラブスカヤ・カフェニヤ(アラブ人のカフェ)」という絵です。一面、ソーダクリームのような白っぽい緑の戸外に、白い装束・白いターバンをまいた顔のない人たちが、思い思いに腰を下ろしたり、ねっころがったりしていて、赤い金魚がいる金魚鉢をじっと眺めている絵です。この絵もじっとものを見ている、凝視している感じがすごくよくって、印象深いのです。で、ワタシの記憶の中にあるカフェの背景になった白っぽい緑が、「ここにもあった」と思わせる絵が、今回の展覧会でもありました。

マティスがアトリエを描いた(たぶん「アトリエ」という題だったかな〜)絵です。たぶんニースのアトリエだったと思うのですが、室内は明るく、淡い光で満たされていて、広い窓から海が見えるのです。その海の緑があわあわとして、ソーダ水にクリームが溶けたような色でなんともいえずにいいのです。なんだか勝手な思い込みですが、マティスの視線が海の向こうに広がっているような気がして、いいなぁ…と思ったのでした。