クンストハウス

「空港からシティ・エア・トレイン(CAT)に乗って、ミッテ駅、ホテルチェックイン、そんでクンストハウスに行くんだ…直截的で極めて効率の良い旅だね」
とグィドに感心された通り、ワタシは、まずクンストハウスを目指しました。19:00閉館までに駆け込まねばなりません。しかーし。飛行機到着が遅れ、CATの駅に着いた頃には16:35の便を丁度逃してしまったばかりでした。17:05の電車まで待たねばなりません。

ホテルに着いたのが17:30頃。ホテルの人に、「アナタのアドバイスが必要です、一番簡単で一番早くクンストハウスにたどり着く方法を教えて!」と食いつかんばかりに尋ねると、彼女は冷静に「歩くことです」と。

歩く、それはワタシにとって道に迷うことと同義です。しかし、彼女は「まっすぐ行って右に曲がると、右手にクンストハウスが見えますよ」とこともなげに言うのです。確かにそれだったら、もたもたとメトロやトラムを使うより早そうです。

歩きました。右に曲がると、道が2つに分かれています。で、間違った道を選択してしまうのがワタシなんだな。案の定、間違え、たどり着いたときには18:00を回っていました…

クンストハウスとは、フンダートバッサーの美術館です。なぜ、目指したかというと…
ある日、友人の家で一冊の画集を見せてもらいました。そこには、なんだか楽しげだったり、哀しげだったりする色やかたち、人の姿が表現されていました。その画集は、手触りがよく、色のノリもしみじみと良くって、ワタシはその友人の家に遊びに行く度に、画集を見せてもらったのでした。その画家(であり建築家)がフンデルトバッサーです。

西洋の住宅が軒を連ねる通りに、ぽこっと別次元のイキモノというか建物が、割って出てきたようでした。ワタシは内心で歓声を上げ小躍りをしました。中に入ると「7時までですよ〜」とクギを刺されました。

2階が常設展示となっています。最初は油絵で、1点1点丁寧に見てゆきました。すると、そのフロアのスタッフが小走りにやって来て、「あのね、7時に閉まるのよ、上の階もあるのよ、大丈夫?上にもいいものがあるのよ」と心配そうに言います。

ワタシが見つけたイイモノは、次の2点。
「The Miraculous Draught」壁面一杯に描かれた、幾何学模様の運河と小舟そして魚。小舟に乗った人々は、茫洋と遠くを見ているようです。
「Aquamarin」その名の通り、さまざまな青のモザイク状の船。

2階はもう一度見ようと心を残して、3階に上がりました。入ってすぐ。タイル状のものに、家がそれぞれ描かれ、つなぎあわせると町になっていました。よくよく見ると、布張りの揃いの本のカバーなのでした。濃いグレーの背表紙に縦にグラデーションの刺繍が入っていて、それがとても上品なアクセントになっていて、魅入ってしまいました。

たくさんの建築の模型というかジオラマがありました。デザインされた切手もありました。版画もありました。イイモノがたくさんありました。1日中、居てもいいと思いました。部屋の中には、たくさんの植物が置かれ、誰かの部屋に遊びに来たようでした。そうバッサーは人と自然をつなぐものがアートだ、と言っていたんでした。

ワタシは美術館に行ってイイモノを見つけると、いつも、自分の部屋を片付けなきゃ、と思います。自分の部屋にあるイイモノたちをちゃんとしてあげないといけないなぁ、と。

3階で見つけたイイモノは、「Comunication with the beyond」という、枯れたピンクや草色を基調とした、遠い空と家と窓の版画でした。視線は淡い地平線へと向かいます。beyondはあの世。バッサーは、この世とあの世をつなぐものを描いていたのではないかと、思ったりもするのです。

閉館後に、1階のカフェでビールを飲み、サーモンとポテトのチーズマッシュを食べました。メニューにはそう書いてあったのですが、パンケーキに焼いたサーモンとスモークサーモンがサンドされていて、日本時間26時のワタシにとっては少々重たい軽食でした。

【追記】
フンベルトバッサーの検索でこられる方が非常に多いです。ありがとうございます。
フンダートバッサー、フンデルトバッサー、フンデルトワッサー、フンデルトバッサー…
日本語表記的に何が正しいのでしょうか。
関連記事はこちらです。
http://d.hatena.ne.jp/ponjpi/20050421