セブン

夜中にテレビをつけたら、陰影のある映像が始まりました。暗い部屋の中に手持ちの灯り。小さな灯りに照らし出される部屋。バケツ。のぞきこんだ男の横顔。嘔吐。そして…
ブラッド・ピットモーガン・フリーマン主演の映画『セブン』でした。
以下、ネタバレあるので注意してください。
ちょとだけ…と思いながら。結局ラストの5時まで見てしまったのは、猟奇的な殺人が重なるセンセーショナルな展開もさりながら、映像のトーンでした。多少の罪悪感を覚えながら夜おそくまでおきている中途半端な感覚に印象的だったのは。影の濃い暗い画面に、小さく、鮮烈に浮かぶゆれる明かり。降りしきる雨。「ブレード・ランナーみたいだな…」と思いながら。ほかにも既視感をもつシーンが多々あって。見ちゃいました。

残り7日で退職するモーガン・フリーマン演じる定年間近の刑事サマセットとブラッド・ピット演じる若手の刑事ミルズが担当する事件。死ぬまでスパゲティをたべさせられ、失神し窒息死した巨漢の男。捜査の参加を拒んでいたサマセットは胃の内容物に疑問を持ち、現場に戻ります。冷蔵庫の裏には、「GLUTTONY(大食)」の文字が…

翌日、弁護士が自宅で殺される。床には「GREED(強欲)」の文字が。サマセットは図書館で「7つの大罪」について書かれた「カンタベリー物語」や「失楽園」の本を調べ、これが連続殺人事件であることを確信します。

書物に記された言葉を読みあげるサマセット。これらが話の伏線になります。図書館が書物が、人の営みの負の部分を抱え、閉じ込め、そしてその箱を犯人があけてしまったようにも思えました。

「犯人を捕まえるか、犯人が7つの犯罪をやりとげてしまうか」見えない犯人との戦いが始まります。

若いミルズには奥さんがいます。高校のときに知り合い、初めてのデートで結婚を確信したという奥さんが。サマセットは、奥さんに乞われ夕食に訪れます。そのとき、ふと感じる奥さんの疎外感。ミルズの自信にあふれたアグレッシブな様子と対象的です。これもまた伏線。

「SLOTH(怠惰)」の事件ののち、ミルズ刑事はある男を殴り倒しします。義憤にかられ。

2人の刑事は「ジョン・ドゥ」を自称する犯人と住所を割り出します。(ジョン・ドゥは英語で「名無し」を表します)犯人は、偽名・職歴不明・なぜかお金を持っているらしい。部屋の中には知性と狂気を示すノートとディスプレイされた犯罪の証拠、自分で現像した写真。

そして電話。「計画を変更する」という犯人の宣言。その後、「LUST(肉欲)」「PRIDE(高慢)」にまつわる事件が続き、残るは「ENVY(嫉妬)」と「WRATH(憤怒)」。そのとき、犯人の「ジョン・ドゥ」(ケヴィン・スペイシー)が警察に出頭します。2人の刑事に敬意を表して、残りの二つの遺体を見せる…と。

嫉妬とは、憤怒とは。ラストシーンで明らかにされます。意外性があるか、定石どおりかは見る人にとって分かれるかと思いますが…すとん、と断ち切られるようなエンディング。そして残る不条理感。

ワタシはその結末を予想できたのですが、エンディングのあっけなさに「犯人はあるいはこの映画は結局何がいいたかったんだろう…」と考え込んでしまいました。

自分は選ばれた人間であり世間の罪を断罪する役目と規定するジョン・ドゥ。彼の狂気を悪と断定し、追い詰めることに夢中になるミルズ。もちろん、ジョン・ドゥの犯したことは悪なのですが、「ENVY(嫉妬)」に火をつけたのが、サマセットが危惧していたミルズの「ウブさnaive」だった。と。

…と言い切るのも皮相な見方かも。実はジョン・ドゥは嫉妬なんてしておらず、憤怒をまねくための挑発だっただけのような気がします。犯人に「名無し」とつけたあたり、人の波に埋もれた大衆の悪意の所在を表してるようにも見受けられますが、さて。