「あるある大事典」検証番組

帰宅してテレビをつけたら、「発掘あるある大事典」の検証番組をやってました。今年1月7日に「納豆を1日2パック食べたらヤセる」とうたった番組で、その実験VTRにデータのねつ造、外国人研究者に対するインタビューの吹き替えがまったく嘘の内容であった件の検証です。当事者の(当該番組の製作局)関西テレビによってCMなし(!)で夜の10時から1時間あまり、フジテレビ系列で放映されました。

フジテレビ系列で放映された「発掘あるある大事典」は関西テレビ日本テレワーク→VTR制作会社(8〜9社)という流れで受発注が行われたそうです。
この検証は、当該番組のVTR制作会社アジトのAディレクターへのインタビューを中心に前半が構成されていました(インタビュアーは吉岡忍氏)。4つほどねつ造されたポイントがあったことが説明されていました。

「わかりやすく、魅力的な番組を作りたかった」「間違った方向にがんばってしまった」と理由づけされていました。「絶対やせる食材X」のXに納豆をあてはめ、その仮説にあてはまる理論を海外研究者に求めたのですが、その結果がかんばしくない。しかし時間は迫る。そのプレッシャーがあったとのこと。この仮説では番組にならない、ということが、海外リサーチャーからの報告でもわかってたはずなのに…ということが、ドキュメンタリーぽく進められていきます。

(個人的に、リサーチャーの人が気の毒でした。何しらべてんの、もっとがつんとくるの出してよ〜とか言われたんだろうな。バカ、もといモノ知らずがが発注者だと大変だわ…)

で、苦し紛れにアポをとった研究者にディレクターはインタビューをとりにいったんですが、思ったようなコメントがとれない、そのため日本語吹き替えの際についつい、正反対の「やせますよ〜」的な声をかぶせてしまった。オフラインのチェックで、関西テレビのプロデューサーなども、元の英語の音量が小さすぎて聞き取れなかった、まさか日本語の部分に問題があるとは思わなかった、とのこと。

他の事例も説明されましたが、ワタシがくいついたのは、やっぱり嘘内容の吹き替え。素材には生音が入っているわけで、バレるの必至です。よっぽどの強心臓じゃないとできないと思う。それでもやったのは、「視聴率さえとれれば」という価値観が当事者間で優先されてたからだと思います。(とはいえ、同様に納豆をテーマにした番組が「あるある」でも制作されていて、こんな問題にはなっていません。他の制作会社はどうだったのか、番組ごとの視聴率をあげて説明されれば良かったかも。野次馬的興味です)

後半、色々な人が色々言ってたんですが、印象に残ったのが吉岡氏の言葉。「情報を娯楽にするときの制限をどうするか」。
「あるある」に限らず、テレビ番組はそのメディア特性から、刺激的で視聴者をつかんではなさない、端的にわかりやすくまとめる、ということが求められると思います。誰が求めてるかというと、お金出してるスポンサーだって求めてるし、テレビは無料だと思って見る人たちだって求めてる。

最後の方で「私たちはだまされた!責任とれ!」的な視聴者のコメントが紹介されていましたが、ちょっとがっかり。それは「わかりやすさ」を求める姿と表裏一体のような気がします。真理というのはものすごーく長く遠い道のりを経てわかるもの、だと思うし、正確を期して冗長になったら、たいていの人は振り向きもしないと思う。

(個人的には、専門に対する敬意とか価値づけが社会的に醸成されることを望むのですが)

(ナレーションに全部「と考えられる」「かもしれない」と全部逃げがうたれるようになるだけだったして)

まぁ、この番組自体が当事者の構成によるものだから。わざとこういうコメントを抱合せたのかもしれませんしね。

最後に。ワタシが一番くいつて、酔眼でメモまでとったのは…。制作費のことです。
1本あたり、関西テレビ(3205万円)→日本テレワーク(3162万円)→VTR制作会社(880万円)。日本テレワークがスタジオ収録分を持っているんだろう、とか推測しますが、やっぱこんなもんなんですかね、配分は。

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