北極圏のアウシュビッツ

お盆休みでしたので、銀座のキヤノンギャラリーに写真展を見に行きました。NHKのラジオロシア語講座テキストでおなじみの亀山哲郎氏の写真展です。常々、亀山氏の軽妙なコラムとビビッドな口絵写真に惹かれておりましたので、展覧会のタイトルが強烈だなぁ…と思いつつも足を運びました。

撮影の対象は、ロシアの北極圏にあるソロヴィツキー島(ソロフキ)です。ソルジェニーツェンの『収容所群島』で、強制収容所として描かれました(ワタシはこの本を読んでいません^^;)。もともとは、ロシア正教の聖職地だったのですが、反体制者およびロシア正教の聖職者を弾圧するために収容所を設け、そこで多くの人々が亡くなりました。処刑だけでなく、収容された人々は飢えや病気、拷問などで亡くなりました。収容所の機能はまさに絶滅収容所だったそうです。「アウシュビッツ」と比するのも、帰宅してから色々調べて頷けるものでした。(あまり予備知識なく行ったのです^^;)

しかし、写された風景は、北極圏の光に照らし出された美しいものでした。空は金属的な光沢があり、雲が怖いような陰影を持っていました。亀山氏のサイトを御紹介します。

kame-photo  亀山哲郎氏のウェブサイト
http://www.kame-photo.com/index.html

透明感のある、張り詰めた空気とともに、ソロフキ村の人々も写されていて、人が存在する暖かさにほっとします。ワタシは、けぶるような湖面を背景に漁師の家の軒先にあったサモワール(ロシア式の湯沸かし器)を写した写真が一番好きです。なお、帰ってから、何人くらい住んでいるのかな…と調べたら、2002年の国勢調査で955人でした。

人間が行った残酷な所業と、写真の悲しいまでの美しさのコントラストがじわじわと染みてくるようで、なかなか寝られません。。

個人的にソロヴィツキー島について関心をもったのは収容が開始されたのが1923年から、という点です。ネットで調べると、どうやら1920年内戦終結後のレーニンの政策に関係がありそうです。ソ連崩壊後にレーニンの反ボリシェビキ派弾圧の文書も出てきているそうですので、もう少し調べてみたいな、と思いました。

■関連するエントリ
http://d.hatena.ne.jp/ponjpi/20050502