人生には「まさか」という坂がある

医者に相手にされなくて悲しい

 

という増田の記事を読みました。身体に不調があって色々いわれるととても不安になるだろうから、こんな経験もあった、ということで流してくれてもいいんだけど、でも、「そんなこともあるんだ」と思って、別の病院に行ってもらえたら、そっちの方がいいかな、と私は思います。そういうわけで、私の経験を書きます。長いです。

長いからまとめると、足に不調があって、整形外科に行った。原因がわからないけど1つずつ検査をしていき、時間が経つにしたがい症状がはっきりして、脳に腫瘍がみつかった、驚いた、という話です。

 

 ある晩、畳に座ってドライヤーで髪をかわかしていたら、右足が急に「固まった」ように動かなくなりました。でも、すぐ動くようになったので、「これは気のせい」ということにしました。

 *

それから。お酒を飲んだ帰り道つまづいて右足をひねった。整形外科に行った。シップをもらった。しばらくして、またお酒を飲んだ帰り道、同じようにつまづいて右足をひねった。かかりつけのA先生は「お酒を飲んだ時は気をつけよう。でも、立て続けに右足ってちょっとへんだね」と言って、足首とひざのレントゲンを撮った。

 とくに異常はなかった。先生は、「お酒には気をつけようね」と言って、シップと痛み止めを出した。

 

それから2か月ほどして、急に右足が動かなくなることがあった。体感で30秒くらい。日をあけて、12度と続いたので、気のせい、ではなさそうだった。また、その整形外科へ行った。「うーん、わからないな」といって、A先生は、腰のMRIを撮るよう手配してくれた。(A先生の病院はクリニックでMRIはなかった)

 というのも、私はヘルニア持ちで、その整形外科に泣きながらかかったことがあった。ヘルニアは痛い。体に何か重いモノが突き刺さっているかのように痛い。結果的にヘルニアは落ち着いたのだが、とにかく私には腰の不調があった。そのため、先生は腰に何かあるのか、疑った。

 結果的に、腰に異常はなかった。先生は、末梢神経に効くというメチコバール(ビタミンB12)を出した。

 

初めて足が動かないことがあってから3カ月後。右足が短時間・急に動かなくなることが、だんだんと増えた。その頃、仕事がとても忙しかったので、変だと思いながら、すぐ戻るので、1カ月ほどやり過ごした。ただ、急に足が動かなくなるというのは、何かおかしい、うまく言えないけど右足がハングしたような感じだったので、バグった日時をメモしておいた。お酒を飲んだ時?寝不足?何か再現性がありそうだったけど、自分でもよくわからなかった。

 そして年末。自転車置き場で急に右足が動かなくなった。私は、自転車を支えるふりをしながら、自転車に支えられた。今度は10分ぐらい?けっこう長い時間だった。さすがにこれを捨ておいてはヤバイと思って、年が明けてから、先生の所へいった。

 その頃、私はとあるSNSに入っていて、「ご飯食べてたら、急に味噌汁を落として大変だった」「飲み会で醤油さしを落として大変だった」と自分の失敗を記していた。見返してみると、足が動かなくなった日と、何かを落とした日が、同じ日か近い日であることに気が付いた。変だなと思って、足が動かなかった日・物を落とした日をエクセルで表にまとめて持って行った。

 

先生はそれを見て、「物を落としたのは右手で持っている時?」と聞いてきた。言われてみると右手だった。先生は、脳のMRIを撮りに行くようMRI専門の病院に紹介状を書いてくれた。「すぐ、明日にでも絶対に行きなさい、そしてデータを持ってすぐにこちらに来なさい」と言った。

 

翌日、MRIを撮ってそのデータを持って先生のところへ行った。しばらくして、診察室に呼ばれた。私はそのときの先生の、哀しそうな表情を忘れられない。

 写真には、素人でもよくわかる、5センチくらいの何かの塊が写っていた。「僕は専門ではないけれど、これは多分、腫瘍だと思う。脳に食い込んではいないから、悪性ではないと思うけど、すぐ専門病院に見てもらった方がいい」と先生は言った。

 

その時、「人生には三つの坂がある。上り坂、下り坂、そして『まさか』だ」と小泉首相が言ったことばを思い出した。なんだ、「まさか」かバカバカしい、と思ってちょっと笑った。

夜道を帰るとき、「人生には三つの坂がある。上り坂、下り坂、そして『まさか』だ」というセリフが何度も何度もリフレインした。

 

翌日、A先生の母校の大学病院の脳神経外科へ行った。初めに見てくれた先生は、「髄膜腫です」と言った。私は、ずいまくしゅ、と繰り返した。「髄膜腫という腫瘍は、大体は良性です。ファーストチョイスは手術です」と言われた。

 「手術しかないんですか?」と聞くと、「これぐらいの大きさになると、放射線治療は効きません。髄膜腫は抗がん剤も効きません」と。

 私は、「では、手術をします」と返事をした。即決だった。それしかないなら手術しかないし、早く日程を決めて仕事の調整をしたかった。

Y先生は即決ぶりに驚きながらも、「隣の部屋のO先生が執刀することになるから、O先生と話す前に検査した方が合理的だね」と言って手術前に必要な検査を手配してくれた。1日がかりで検査をして、O先生から病気についての詳しい説明や術式の説明を受け、手術の日程を決めて会社に行った。

 

 私「えー、脳にずいまくしゅという腫瘍ができました。手術をするので1カ月ほど休みをください」

社長「マジでww?」

私「マジです」

社長「マジでw?」

私「マジです」

社長「マジで?」

私「マジです」

社長「マ…分かった。詳しく教えて」

 

だいたい、こんな感じで色々な人を驚かせながら、治療生活に突入したのでした。